若きコピーライターが私の前に座った。そして、一回り異常若い先輩に教えてもらうことになった。
師匠は突然決まった!
ベンチャー企業らしく固定の机はデザイナーと総務以外はない。部長が座る席は固定されている。そのほかの社員はロッカーから必要な資料を出して好きな席に座る。早い者勝ちだ。さらに、なぜか8角形の大きな机が人気。
私は原稿を書くために、会いている机に座った。6人がけの長方形の机で窓際だ。そこが落ち着く。外が見えるし、街を歩く人が見える。外を眺めているだけで落ち着いた。ダイニングテーブルで翻訳に取り組む仕事に比べて、かなら楽な感じだ。翻訳の仕事は孤独との戦いだった。会話する相手は小さな娘と父だけだった。それに比べれば、今の環境はご機嫌だけど、総務の女性スタッフと先輩CA千晶さん、社長以外に話したことはなかった。
デスクで考え込んでいたら、「あの新人さんですか?」と席の前に座ってくれた女子は20代後半だった。彼女は小さな出版社から転職してきたライターで、実はバツイチの子持ちだった。ものすごく可愛く社内では一番の人気者で「聖南ちゃん」といつも呼ばれている。
もう1人男子がやってきた。腹のデカさはすごいが、骨も太くラガーマンという感じ。聞いてみたら花園出場は3回を誇る正真正銘のラガーマン。元のビール会社の営業マンで営業から逃げたくて週末学校に通って、Webデザイナーになったらしい。
社長の研修は地雷?
聖南さんが「もう原稿を書けと言われたのですか?」と聞いてくるから、「まあ、書いてみようかなという感じです」と答えたら「それって、地雷ですよ」と毒をはく。
地雷なの?
「どういうこと」
「原稿かけと言われてからどれくらい立ちましたか?」
「研修終わってから、だから、45分ぐらいかな」
「書けましたか?」
「とりあえず」
と言って聖南さんに見せた。
「あの、初めて原稿描くのですよね」
「初めてです」
「そうですね。これだと雑記ブログに載せるレベルですね」
「だめ?」
「ニキビがテーマですよね。ニキビについて調べましたか?」
「特には」
「やっぱりね」
「まず、Googleで検索してみてください。ここに入れるキーワードで勝負は決まりますよ」
「ニキビで検索すると膨大な量の情報が出てきすよね。Googleの活用法の解説をしてくれるのかな?」
「新人は社長が研修するの?」
「全員ではないです」
「は?私だけ」
「社長に狙われてませんかね」と坂田くんがいい出すからややこしい。
「坂田、黙ってろ」と聖南さんがどつく。
「はーい。すいません」と素直に謝る坂田くんが不思議だった。なんとなく、私も坂田くんと呼んでしまうぐらいに、なんだか軽い。
上下関係はあるんだ。一応な。という感じかな。
社長にダメ出しするの!
「うーんと私の原稿があと40分で仕上がるので、終わったら私が研修します」
「社長の研修はどうするの?」
「受けなくていいです」
「いいの?」
「私が今から研修引き継ぎますと連絡します」
と言って、聖南さんがチャットワークで社長に新人研修をやらせてくださいと連絡。
すると「お願いします」と返答がくる。
「はい、私が引き継ぎました」
こんなに簡単に引き継ぐの?
「社長は本業は営業でライターではないので、ダメなんです」
「え?社長にダメ出しするの?」
「いつものことですけど」
そうなんだ。
なんだか、この会社はとてつもなく重白いのかもしれない。
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